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学生に伝えたい、フリーランスのドロドロした側面、生き方と働き方

初めまして、フリーランスでiOSエンジニアをしている、鈴木孝宏と申します。 この投稿は、公立はこだて未来大学 Advent Calendar 2022 part3の12月6日の投稿として書いたものです。 なんと、このアドベントカレンダーは未来大のOBも書いて良いようで、空いているスポットがあったので、それを埋めるために書いてみることにしました。

この投稿でお話しする内容は、これから就職活動をする学生に向けたものになります。 「こんな生き方もありなんだ……」と感じられるような、良くも悪くもロールモデルのひとつになったらいいなと思いながらお話しします。

ばーっと書いたので、図もなく、文字ばっかりですみません🙇

これを書いている人 #

フリーランスでiOSアプリの開発者をしています、鈴木孝宏(すずきたかひろ)と言います。 2009年〜2015年に未来大に在籍していました。

大学にいた証はもう学内にはありませんが、唯一残っているものといえば、木村研横のガラスに貼ってある「entaq」と書かれたカッティングシートかなと思います。この存在に気づいていない人も多いかもしれません。これは、友人たちと4人でやっていたentaqという団体のロゴタイプです。学内や市内のイベントに関係するグラフィックデザインやDTPを請け負うことをしていました。

まだ貼ってあるって、木村先生この前言ってた。ほんとかな……?

まだ貼ってあるって、木村先生この前言ってた。ほんとかな……?

私のこれまでのキャリア #

  • 学生時代
    • 学部3年の頃のプロジェクト学習……Mind Communication プロジェクト
    • 学部4年から修士2年……美馬義亮研究室所属ですが、角康之研究室にもいました
      • 過去に美馬研に所属していた人を探しています。美馬研だった人、至急連絡ください🙇
    • あとマスター時代にIPA未踏を経験した
  • 社会人になってから
    • ネットメディア企業3年……スマホアプリ・フロントエンドからバックエンド・インフラまで満遍なく経験
    • フィンテック企業1年……スマホアプリ専業に。ユーザーインタビューの実施(UXリサーチ)や、施策、UIを薄く経験
    • フリーランスになって4年

経歴の詳細は、トップページを参照ください。なお、最新ではないため、未記載の経歴があります。

綺麗なキャリアじゃない話をしたい #

12月に入ってから、フリーランスになって4回目の確定申告の準備を進めていました。こうして準備を進めている今だからこそ、フリーランスのドロドロとした、リアルな感想を書きたいと思います。

かねてより、学生の頃のキャリアガイダンスには、思うところがたくさんありました。大企業や有名企業の会社員じゃないロールモデルがあってもいいじゃないか。やりたいことから逆算するキャリア?やりたいことがないから決められないじゃないか。綺麗なキャリアの話を聞きたいんじゃない、もっとドロドロした人生の話を聞きたい。そんなことを思う学生時代でした。

この投稿では、フリーランスのリアルな働き方、どちらかといえばお金の話題を中心に進めていきます。 キャリアガイダンスでは扱われないロールモデルの穴を埋めることを目的に、煌びやかなキャリアとは逆の話題をしたいと思います。

家族へのサポートを増やすために、フリーランスになった #

まずフリーランスってなに?という質問については、とりあえず広い定義で「会社に雇われていない働き方をしている人」としておきます。社会的には「個人事業主」とか「自営業」に分類され、例えば俳優や芸人、声優とかも同じ立場になります(注: 所属事務所によっては社員扱い)。しばしば、年配・中年の人からは「『失敗しないので』の人でしょ」のように「ドクターX」受け売りのことを言われたりしますが、すみません、失敗はしますよ。

フリーランスの大きな特徴は、お金周りのことを全部自分でやることかなと思います(税理士などにお願いすることもできるけど)。所得税、消費税、住民税、健康保険税、年金などを自分で管理・計算・支払いをします。会社員であれば、この辺りは会社がやってくれますが、フリーランスは自分でやることになります。このあたりについては、この投稿の後半で述べます。

そもそもどうしてフリーランスになったか、という話題にも触れておきたいと思います。きっかけは、ざっくり3つありました。妻が下の子=2人目を妊娠したこと、子どもの成長を近くで見ながら仕事をしたいと思ったこと、自分の技術力に自信がなかったことからでした。自分がフレキシブルに動ける立場になることで、家族へのサポートを増やしたかったということが、大きな理由です。

高い報酬をもらえるからとか、自信があったから、といった理由はさっぱりありませんでした。

なお、フリーランスになった詳細な経緯については、「 フリーランス1年目の振り返り - きっかけと妻への相談と説得」に記載しております。もうちょっと知りたい方は、拙い文章ですが、読んでみてください…。

フリーランスのドロドロとした部分 #

では早速、フリーランスのドロドロとした日常について話を進めていきたいと思います。大きく分類すると、働き方、お金、税金の話題について話していきます。

週4日勤務 #

フリーランスになって変わったことは、まず働く日数を自分で選べるようになりました。私が選んだ最初の働き方は、平日の週4日は都内の会社で勤務をする、平日の残り1日は妻の妊婦検診に付き添う or 娘の面倒を見る、そして土曜日は自宅で別の開発案件を進めるというものでした。実質的に週5日勤務のスタイルにし、複数の案件から分散して収入を得ることで、生活を安定させようと試みました。このスタイルでも週3日は自宅に居ることができるので、毎日往復2時間かけて通勤していた会社員時代と比べて、家族をサポートする時間を増やすことができました。

フリーランス初期の1週間

休み 都内に出勤 休み(妊婦検診付き添い等) 別案件(自宅)

その後、世の中にコロナが蔓延し、全ての案件がリモートワークになりました。今も、契約している全ての案件がリモートワークです。

最近の1週間

休み(子どもたちの面倒) リモート リモート 休み(子どもたちの面倒) リモート リモート 休み(子どもたちの面倒)

上で「リモート」と書いている案件のほかにも契約している案件がありますが、それらは依頼があったときに動いています。 依頼があれば、休みのどこかを使って開発を進めています。 「じゃぁ、週に3日も空いているじゃないか、他の案件もできるのでは?」と思われる人もいるかもしれません。でも、これが私の働き方(というか生き方)なので、これ以上案件を増やす予定はありません。子どもが2人とも小学生になるまでは、このスタイルを続けるつもりです。

最近は、子どもや家族を優先しやすい会社が増えてきた印象がある。会社員でも勤務体系を調整しやすくなっているから、事情があれば会社と交渉するのが良いと思う。

売り手・買い手の構造は、給与よりもシンプルに感じる #

フリーランスになって大きく変わることは、自分で報酬を選べるということです。会社員であれば、上司や役員から受ける評価と給与ランク表で給与が決まりますが、フリーランスの場合、報酬の金額は、契約する会社との契約で決まります(注:会社員でも自分で給与を決める会社もあります)。僕から提示した時間単価や報酬金額で、相手が納得してもらえれば契約成立、納得できなければ契約不成立というシンプルな構造になります。簡単に言えば、売り買いの構造です。

では、私はどれくらいの金額で契約しているのかというと……これは契約している会社さんのためにも具体的な金額は伏せておきます。 ですが、週4日勤務で、諸々の税金を払いながらも生活はできる金額です。少なくとも、自分のスキルから考えられる相場内の金額を提示するようにしています。

ちなみに、交渉中の会社さんが正社員の求人を公開していれば、それの1.5倍〜2倍くらいの金額で提示することが多いです(そうしないと年金税金を払えない)。

正社員一人を雇うにも、給与として支払う金額の1.5倍〜2倍や3倍くらいのお金がかかるんだそうです。会社員なら会社側でやってくれる税金まわりなどを、フリーランスは自分でやっていることを考えれば、求人の1.5倍〜2倍という金額は、企業側の想定とそう乖離した金額ではないと思います。

税・税・税 #

税金についてですが、お話ししたいことがたくさんあります。税金は、要するに自分の手元に残ったお金の中から国や自治体に納めるお金のことですが、自分の手元にお金をいかに残すかということは、事業のみならず生活の死活問題でもあるわけです……。

フリーランスにとっての主な税金は、所得税・住民税・国民健康保険税(料)、そして昨今インボイス制度とかで話題の消費税があります。この中でも前半の3つは、所得、つまり儲けに対して課す税金なので、税金を減らすには、ここをいかにして圧縮するかが肝になります。 念のため、所得というのは、売上から経費と年金、健康保険税などを差し引いた、手元に残った金額のことです。

税金のことや、節税対策 & 控除については、時間のある学生のうちに一度知っておくと良い気がする👍

売り上げを超ざっくり公開 #

では、そもそもフリーランスの売上がどれくらいあるか、というところにもついても触れておきます。 あまり公開したくはないですが、Twitter「課税事業者です」とツイートしちゃっていることから、売上は概ね推測できてしまいます。 今年の売り上げも含めて、かなりざっくり公開します。

売り上げ金額 備考
1年目 😷 会社員時代+フリー転向後の合算
2年目 1,000万円超 1,000万円を超えた年の2年後は、消費税を納税する「課税事業者」になる決まりになっている
3年目 😷 集中すべき案件があり、契約を減らした
4年目(今年) 500万円未満の見込み 上半期は案件持ち過ぎで体調不良に。しばらく休養した

何度も書きますが、売上から経費・年金・保険等を差し引いた金額が所得 = 手元に残るお金です。 今年は課税事業者ですから、さらに消費税も納税予定です。 稼いだ売上の30%〜50%は、こうして消えていきます……。 この不安定さを、お分かりいただけただろうか……。

働き方 < 生き方 #

こんな不安定なフリーランスですが、それでも続ける理由があります。それは、今のスタイルが自分の生き方に合っているからです。

フリーランスになって、働き方より生き方を優先していいんだという基本的なことに気付かされました。 私がちょうどフリーになった頃は、働き過ぎ・働かせ過ぎによる問題が多く出ていた頃でした。そんな世の中でも、何を優先して生きたいかを考え、それにあった働き方を考えて選んで、それでも生きていけるんだ、ということを身をもって体験し、自分の中で驚きがありました。会社の事業が回るのであれば、生産できているのであれば、働く時間や場所を会社の都合に無理に合わせる必要はないんだと(会社員であれば交渉の余地がある範囲なんだと)、フリーランスになってから気付かされました。

今後、会社員に戻る可能性があるかというと、それはもちろんあります。子どもの成長や家族の変化で、僕自身の生き方も変わってきます。生き方が変われば、最適な働き方は変わります。最適な働き方が会社員だと思えば、当然ながら、会社員として働くことを選択すると思います。

お金については学生のうちから知っておいた方が良いよ #

最後に、これから就職活動をする学生が今できることを考えてみます。

まず、会社員以外にも働き方はいろいろあるので、視野広くみてほしいと思います。ただ、そもそもどんな働き方があるのか、というところは、これまた一度働いてみないと見えてこない部分でもある気がします。そういうことからも、一度会社員になって、給与のことや社内政治のこととか、会社の意思決定の流れなど、愚直なドロドロした部分を知るのは大事だと感じます。

お金のことは、今のうちからよく調べておいた方がいいです。特にお金の運用。もしいま、運用回りの知識がもしなければ、まず長期で積み立てる投資信託を知っておけばまず十分と思いますので、簡単な本を読んでみるといいかもです(山崎元,大橋弘祐「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」とか、両@リベ大学長「本当の自由を手に入れる お金の大学」とかは読みやすいです)。僕はと言えば、子どもが生まれてから知ったので……遅かったなと感じています。これからの人生を防衛するお金のことを、早いうちに知っておいた方が良いです。


キャリアガイダンスでは紹介されなさそうな、煌びやかではないキャリアについて述べてきました。 全く不安定で、面倒臭くて、政治に対して文句の一つも言いたくなるような立場ではありますが、これが今の自分の生き方に合っていると感じています。 この投稿で触れなかった部分がいくつもありますが(新卒時の就職活動、所得控除、日々の経費精算など)、長くなってしまったので、この辺りで失礼します。

今年もあとわずか、皆様良いお年をお迎えくださいませ!